ウザワ・ヒロフミ。経済学者。
1928年7月21日、鳥取県生まれ。51年に東京大学理学部数学科を卒業後、経済学専攻に転じ、56年に渡米。スタンフォード大学准教授やシカゴ大学教授などを歴任する。この間、数理経済学の分野で数多くの業績を残しており、特に、消費財と投資財の2部門による経済成長のメカニズムを示した理論は「宇沢の2部門成長モデル」と呼ばれて、後進の経済学者に大きな影響を与えた。68年の帰国後は、東京大学経済学部教授に就任。70年代に入ると、経済成長優先の学説や政策に批判的な立場を取るようになり、環境問題や公害問題などへの関心を強める。74年に出版した「自動車の社会的費用」(岩波書店刊)は、交通事故や排ガスによる公害など、自動車社会のコストを経済学的に算出した内容が話題を呼んでベストセラーとなった。また、自然環境や教育、医療などを社会的共通資本と位置づけ、これらの整備の必要性を説いた。水俣病問題や成田空港問題、地球温暖化問題にも積極的に関わった。「近代経済学の転換」(86年、岩波書店刊)「現代日本経済批判」(87年、同)など、多数の著書がある。83年に文化功労者、97年に文化勲章を受章。2014年9月18日に死去。86歳。