サキ・リュウゾウ。作家。
1937年4月14日、旧朝鮮咸鏡北道(現・北朝鮮)生まれ。本名、小先良三。41年に母親とともに帰国し、広島県や福岡県で育つ。福岡県立八幡中央高校を卒業後、八幡製鉄(現・新日鉄住金八幡製鉄所)に入社。同社に勤務しながら小説の執筆を始め、同人誌などに作品を発表する。63年に製鉄会社を舞台とした短編小説「ジャンケンポン協定」で第3回新日本文学賞を受賞。翌64年に八幡製鉄を退社し、文筆業に専念。71年に本土復帰前の沖縄に移るが、72年に警察官殺害事件の容疑者として誤認逮捕され、この体験が、後に犯罪小説を執筆するきっかけとなった。73年、千葉県に転居。75年、福岡県などで実際に起こった連続殺人事件を題材にした小説「復讐(ふくしゅう)するは我にあり」(講談社)を発表し、翌年の第74回直木賞を受賞した。同作は79年に今村昌平監督、緒方拳主演で映画化もされ、話題を呼んだ。この作品で裁判や事件現場を綿密に取材して犯罪者の心理や事件の社会的背景を描き出す作風を確立し、以後も実際の刑事事件や裁判を題材とする作品を執筆。91年に「身分帳」(90年、講談社)で第2回伊藤整文学賞を受賞した。また、88~89年に東京、埼玉で発生した連続幼女誘拐殺人事件の裁判傍聴に基づく「宮崎勤裁判」(91年、朝日新聞社)や、オウム真理教による一連の事件の裁判傍聴記「オウム法廷連続傍聴記」(96年、小学館)など、ノンフィクション作品も多数手がけた。豊富な取材経験から、テレビ番組などで事件についてのコメンテーターを務めることも多かった。99年に福岡県北九州市に転居し、2006年から12年まで、同市立文学館館長、12年以降は名誉館長を務めた。15年10月31日、下咽頭がんのため死去。78歳。