ナダ・イナダ。精神科医、作家。
本名、堀内秀。1929年6月8日、東京生まれ。53年に慶應義塾大学医学部を卒業後、フランスに留学。帰国後は、慶應義塾大学病院、井之頭病院、国立療養所久里浜病院(現・久里浜医療センター)に勤務した。医師としては、アルコール依存症の研究、治療の先駆者として知られる。病院勤務のかたわら、スペイン語で「何もなく、何もない」を意味する「なだいなだ(nada y nada)」というペンネームを用いて執筆活動にも取り組み、同人誌「文芸首都」に参加。小説「海」「トンネル」などで、計6回、芥川賞候補となった。65年に出版されたエッセー「パパのおくりもの」(文藝春秋新社刊)で注目され、69年の「娘の学校」(中央公論社刊)で婦人公論読者賞を、70年の「お医者さん」(中央公論社刊)で毎日出版文化賞を受賞した。ほかにも「人間、この非人間的なもの」(72年、筑摩書房刊)「権威と権力」(74年、岩波書店刊)など、著書多数。2003年には、インターネット上の仮想政党である老人党を結成し、弱者が暮らしやすい社会の実現などをホームページで訴えて話題になった。11年に前立腺がんを発症。さらに、13年には雑誌「中央公論」6月号に掲載されたエッセーで、すい臓がんであることを公表した。同年6月6日、死去。83歳。