アガワ・ヒロユキ。作家。
1920年12月24日、広島県生まれ。旧制高校在学中に小説を書き始める。42年に東京帝国大学(現東京大学)国文科を繰り上げ卒業して、予備学生として海軍に入隊。44年に海軍中尉として中国に赴き、同国で終戦を迎えた。46年に帰国して作家の志賀直哉に師事し、復員体験を描いた短編小説「年年歳歳」で作家デビューする。自らの海軍体験をもとにした「春の城」(52年、新潮社)で第4回読売文学賞を受賞。その後、広島の被爆者を題材にした「魔の遺産」(54年、新潮社)、特攻隊員の苦悩を描いた「雲の墓標」(56年、新潮社)などの戦争文学を発表し作家としての地位を確立。同時期にデビューした遠藤周作や吉行淳之介、安岡章太郎らとともに「第三の新人」と呼ばれた。海軍提督3部作と呼ばれる「山本五十六」(69年)、「米内光政」(78年)、「井上成美」(86年、いずれも新潮社)などの伝記小説や、師の生涯を書いた評伝「志賀直哉」(94年、岩波書店)でも高く評価される。また、「お早く御乗車ねがいます」(58年、中央公論社)などのエッセーや、ロングセラーとなった絵本「きかんしゃ やえもん」(59年、岩波書店)の文なども手がけた。99年、文化勲章を受章。長男は法学者の阿川尚之、長女は作家、エッセイストの阿川佐和子。2015年8月3日、老衰のため死去。94歳。