トミタ・イサオ。シンセサイザー奏者、作曲家。
1932年4月22日、東京生まれ。慶應義塾大学在学中、作曲家の平尾貴四男、小船幸次郎に師事し、作曲を始める。同大学在学中からNHKの音楽番組に参加し、63年にはNHK大河ドラマ第一作「花の生涯」の音楽を担当。「きょうの料理」「新日本紀行」などの音楽も手がける。65年に「ジャングル大帝」、67年には「リボンの騎士」と、手塚治虫のテレビアニメの音楽も担当。70年代に入ると、いち早くシンセサイザーを導入し、電子音楽の先駆けとなる。74年発表のアルバム「月の光」は、アメリカのビルボード・クラシカル・チャートで1位を獲得するなど世界的なヒットを記録。日本人として初めて、グラミー賞4部門にノミネートされる。また、全米レコード販売者協会の74年度最優秀クラシカル・レコードにも選ばれた。その後も、「展覧会の絵」「惑星」「火の鳥」などのクラシックの名曲を現代的にアレンジした作品を発表し、世界的な評価を確立する。98年には、邦楽器、シンセサイザー、オーケストラを駆使して源氏物語の世界を表現した「源氏物語幻想交響絵巻」を作曲した。映画音楽も数多く手がけており、2003年には山田洋次監督作「たそがれ清兵衛」で第26回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した。同年、旭日小綬章を受章。12年には、ボーカロイドの初音ミクを起用して宮沢賢治の世界を音楽化した「イーハトーヴ交響曲」を発表、上演し話題を集めるなど、近年も精力的に活動。16年11月には、初音ミクとオーケストラ、バレエを組み合わせた、生誕85周年記念作品「ドクター・コッペリウス」が上演される予定で、その制作作業を続けていた。同年5月5日、慢性心不全のため死去。84歳。