アッバス・キアロスタミ。映画監督。
1940年6月22日、イランのテヘラン生まれ。テヘラン大学美術学部で学んだ後、グラフィックデザイナーを経て、68年に国営の児童青少年知育協会に入り児童向け映画の製作に携わる。70年、短編「パンと裏通り」で映画監督デビュー。79年のイラン革命後も同国にとどまって映画制作を続ける。プロの俳優ではない人を起用するなどの手法を特徴とし、少年の友情を描いた「友だちのうちはどこ?」(87年)で国際的に注目を浴びた。92年の「そして人生はつづく」でカンヌ国際映画祭ロッセリーニ賞を受賞。この2作と94年の「オリーブの林をぬけて」は合わせて「ジグザグ道三部作」と呼ばれる。97年の「桜桃の味」では自殺の手助けをしてくれる人を探す中年男性の姿を描き、カンヌ国際映画祭の最優秀賞であるパルムドールを獲得。99年の「風が吹くまま」でもベネチア国際映画祭審査員特別大賞を受賞し、イラン映画界を代表する監督となった。ほかに「クローズ・アップ」(90年)、「トスカーナの贋作」(2010年)などの監督作がある。2004年イスラム圏から初の世界文化賞を受賞。日仏合作映画「ライク・サムワン・イン・ラブ」(12年)は日本で撮影され、奥野匡、高梨臨、加瀬亮らが出演した。映画監督の小津安二郎を敬愛する親日家としても知られた。日本とイランの文化交流への貢献が評価され、13年、旭日小綬章を受章。16年7月4日、がん治療のため滞在していたパリで死去。76歳。