政府は2025年度の医療給付費の目安を45兆円に抑制する方針だが、医療費は高齢化を背景に毎年1兆円のペースで伸びており、GDPの伸びを上回っている(06年度は診療報酬改定の影響から微減)。これまで経済財政諮問会議では、社会保障給付費の上限を、名目GDPを基本に高齢化要因も加味した高齢化修正GDPに連動させて管理する手法が議論されてきた。財務省は、国費にあたる一般会計予算における社会保障予算の伸びを、名目GDP成長率などに連動させる方針を立てている。これらは、04年に導入された年金給付を経済状況に連動させるマクロ経済スライドを医療・介護にも適用する考えに基づくものである。一方、厚生労働省は当初、社会保障給付費の伸びを抑えるために必要なのは、都道府県ごとに提示される糖尿病など生活習慣病の発症率の低下や平均入院日数の短縮など、個別の医療政策の数値目標の積み上げであると主張してきたが、05年10月には、医療費のGDP比9%以内という数値目標を容認するに至った。このような厚生労働省の場当たり的な政策転換は、医療の現場のみならず、医療サービスを受ける側の国民の信頼を大きく損なっている。