2008年10月に麻生太郎内閣(当時)の下で策定された経済対策(「生活対策」)の目玉として導入されたもので、景気悪化に伴う所得減少の援助的な色彩が強い。65歳以上の者及び18歳以下の者については2万円、それ以外は給付対象者1人につき1万2000円の定額が現金で給付された。貯蓄に回され消費に結びつかない部分がある中で、確実に財政赤字を拡大させることから、政策効果に対する評判は必ずしも高くない。過去には、同種の政策として小渕恵三内閣での「地域振興券」(1999年1月)がある。地域振興券は地域経済の振興などを目的として、15歳以下の子どもがいる家庭の世帯主と高齢者に対して、所得制限なく1人当たり2万円が支給された。地域振興券は現金ではなく地方公共団体で発行された金券のかたちをとった。当時も、地域振興券でまず生活必需品を買い、残りを貯蓄に回した家計が多く、地域経済の浮揚に期待したほどの成果は上がらないと評価された。また、鳩山由紀夫内閣では2010年より少子化対策、子育て世帯への援助を目的として「子ども手当」が導入された。過去の政策と同様、所得制限はなく、15歳以下の子どもの保護者に毎月2万6000円を支給する(初年度は半額)。これらの政策の意図はそれぞれ異なるものの、基本的にはどれも所得援助的な社会保障政策に位置づけられる。他方、現行の「児童手当」(所得制限あり)は児童手当法に基づく少子化対策目的の施策であり、理念的に社会保障政策とは異なる。