BRICs経済(→「BRICs」)の台頭が世界のエネルギー需要を大幅に押し上げているが、その成長率が他の地域より高い限り、エネルギー不足が長期的に定着していくのは間違いない。このような予測の下で世界各国は政府が先頭に立ってエネルギーの確保に走り始めた。特に中国は、2005年の原油需要3億トンが15年には3億5000万トン、輸入比率もこの間に40%から60~70%になる(中国石油化工調べ)。そのため00年前後からアフリカを中心に原油供給国(ナイジェリア、スーダン、アンゴラなど)と首脳外交を繰り返し、さらには開発援助を与えながら原油採掘権を囲い込むエネルギー外交を展開している。さらには二酸化炭素と硫黄の排出量が石油よりも低い液化天然ガス市場でも需要側、供給側ともに目立った変化が現れている。このような国家をあげてのエネルギー外交は、しばらくは活発に続くと思われる。さらにこうした需要側の変化に対応し、供給側でも資源の国有化に向かうケースが目立つ。南アフリカ共和国では黒人の経済進出を支援するブラック・エコノミック・エンパワーメント(BEE black economic empowerment)政策の一環として、基幹産業である金、プラチナなどの鉱山に関して14年までに黒人企業に株式の最低26%を譲渡することを決めた。ジンバブエ、ナミビアなどでも貴金属関連企業の株式を国有化する動きをとり始めた。さらに南米ではボリビア、ベネズエラが海外企業の略奪に終止符を打つという名目で天然資源の国有化を進めている。アジアではインドネシア、インドで欧米資本が保有する資源・エネルギー各社と地域住民の衝突が続いている。また、アメリカではエタノール産業が拡大し、シリコンバレーではインターネット、バイオに続き充電池などのハイテクエネルギーをめぐる競争が始まっている。また東南アジアでは、国をあげてバイオ・エネルギーの開発に取り組むなど、長期的視点に立って石油以外の代替エネルギーを求める動きも目立つようになった。