アメリカでは1991年3月から2001年3月までの10年にわたって景気拡張が続き、失業率も継続的に低下していった。1990年代後半には、IT投資に牽引されて生産性も大幅に上昇したため、インフレと景気後退のない「新しい経済(new economy)」が定着したという楽観論さえ一部で信じられるほどであった。しかし、99年後半にはそれまでの投資過剰から在庫が急速に増加。ITバブルは崩壊し、景気後退期に入った。また、グローバル化の進展にともなってアメリカ産業と生産ネットワークを築いていた東南アジア諸国は、アメリカの景気反転の影響を強く受けるに至った。しかし、アメリカでは生産調整とストック調整が比較的短期間で完了し、2001年11月には早くも景気が底をうち、再び景気拡大局面に入った。ただし、1990年代のように力強いものではなく、特に2002年後半から03年前半にかけてはインフレ率が極端に低下したため、日本経済に続いてアメリカもデフレスパイラルに陥るのではないかという「デフレ懸念」(→「デフレーション」)が表面化し、一転して慎重な見方を反映した政策がとられるに至り、03年後半以降は、ブッシュ大統領(当時)の大型所得減税政策と連邦準備制度理事会(FRB Federal Reserve Board)の金利引き下げの結果、株価も穏やかな上昇に転じた。さらに、金利低下局面で、金融機関が大々的に長期ローンの低金利ローンへの乗り換えを推奨したため、一般家計の金利支払額が大幅に減少し、それが新たな消費に支出されるという消費押し上げ効果が景気を支えた。03年後半以降、住宅価格の上昇が始まるや、金融機関は住宅保有者に対して、取得時に設定したローン残高と住宅市場価値の差額を担保として、その差額分を融資するエクイティローンを広めた。住宅価格が上がり続ける限り、融資も増え続け、それを家計が消費に回していくという、消費押し上げ効果が働いた。その後、06年央から住宅市場で、新築住宅、中古住宅ともに価格上昇率が鈍化し始め、07年にはサブプライムローン問題が発生。大手金融機関が軒並み大規模な損失を計上し、株価も下がるなど、世界的に影響が出ている。