ドーハで発足が決定したWTO新ラウンドの交渉分野として、EU(欧州連合)が最も強く推していた分野。結局、さまざまな多国間環境協定にある貿易制限措置とWTO(世界貿易機関)のルールの関係を明確化するための交渉を発足させるということで決着した。現在、実効のある多国間環境協定は約200あるが、貿易に関する規定を持つものは20である。とくに重要なのは、(1)オゾン層保護を目的に、フロン生産禁止などの義務を守らない国との輸出入を規制するモントリオール議定書、(2)有害廃棄物の越境移動を制約し、非締約国との間の輸出入を原則禁止するバーゼル条約、(3)絶滅の危機に瀕している野生動物の取引を規制するワシントン条約、などである。こうした協定を理由に貿易制限措置を発動した場合、相手国がそれをWTOに提訴した場合の扱いなど、多国間環境協定とWTOルールの整合性が試される状況が考えられる。環境問題にとりわけ重点を置くEUは、2002年3月に、WTOラウンドの会合で、環境関連の多国間協定を守る目的なら輸出入規制などの貿易制限措置を幅広く容認することを提唱した。この立場を日本は支持したが、アメリカやオーストラリア、ニュージーランド、タイ、マレーシアなどは環境保護に名を借りた保護貿易主義だとして反対した。