ダンピングとは、ある商品の輸出価格が、その商品の国内向け価格を下回った状態で輸出が行われることをさす。輸出国のダンピングによる販売によって、輸入国の競合する産業が損害を被っていることが正式な調査によって明らかになった場合、輸入国は損害を被った自国の競合産業を救済するためのアンチダンピング(AD)措置をとることをWTO(世界貿易機関)の条約は認めている。具体的なAD措置としては、反ダンピング課税があげられる。過去においてAD措置が実施された実体を見ると、AD措置が最恵国待遇の例外措置であり、特定国からの特定産業における輸入だけに焦点を絞った輸入制限的な措置が可能であることを悪用し、発動要件がより厳格に決められているセーフガード措置の代わりとして、安易に発動されてきたきらいがある。AD措置の発動は、従来からアメリカ、カナダ、EU(欧州連合)、オーストラリアの4地域に集中していたが、今日では先進国のみならず、発展途上国による発動件数も増加傾向にある。