既存の企業を合併・買収する行為であるM&Aが、国境を越えて行われること。また、クロスボーダーM&Aは、新たな企業の設立をともなわない直接投資という解釈もできる。近年、世界全体のクロスボーダーM&Aの取引規模は直接投資全体の約8割を占める。1990年代後半、世界的にM&Aが活発化し、世界全体でのクロスボーダーM&Aは10年間で約7倍になった。世界のクロスボーダーM&Aの国別内訳を見ると、買収国ベース・売却国ベースのいずれでも欧米企業が約8割を占めており、主導的である。この背景には、株価の高騰を活用した株式交換による大型M&Aが、欧米企業の間で増加したことがあり、2000年にはクロスボーダーM&Aは過去最高記録を達成した。直近のトレンドを見ると、クロスボーダーM&Aにともなう資金移動ではイギリスへの資金流入が際立っている。イギリスの銀行HSBCが集計した06年1~3月のデータによれば、イギリスへの流入は1688億ドルで、アメリカへの流入767億ドル、ユーロ圏への流入320億ドルを上回り、これから流出額を引いた流入超過(1365億ドル)でもイギリスは断然トップに立っている。アメリカも流入、流出ともに800億ドル前後を記録するが、流出が上回り、88億ドルの出超。外資参入に対してオープンなイギリスの法制度が、この数字の背景にあると考えられる。