東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国が進めている地域的自由貿易協定の構想。1992年1月に開いた首脳会議で設立に合意してスタート。域内で生産したすべての工業・農業製品の関税をゼロにすることをめざしている。関税の引き下げは、先行する6カ国(タイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、フィリピン)と、90年代半ば以降に加盟して経済発展が遅れている4カ国(ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー)に分けて、段階的に進められる。先行国の場合、2002年に関税引き下げ対象品目の関税率を0~5%に引き下げ、最終的には10年に関税率ゼロをめざす。一方、後発組は15年までに関税率ゼロをめざす。02年はこの貿易自由化構想において節目の年となったが、先行6カ国間の平均関税は、1993年の12.76%から、2.89%へと、目標の5%を大きく下回って低下した。その一方で、フィリピンの砂糖や石油製品など、自由化を先送りする一部産業をめぐる貿易摩擦も発生した。2003年6月、プノンペンで開催されたASEAN外相会議では、モノやサービスに加えて、ヒトやカネまでを域内移動自由とするASEAN経済共同体(AEC)を、20年をめどに創設することで合意した。さらに、06年8月の経済担当相会議では15年へ5年の前倒し方針を確認した。ASEANをめぐっては、対外的な動きも近年活発である。01年11月6日にASEANは中国との間で、10年における自由貿易協定(FTA)締結に向けた高級事務レベル協議の開始で合意したのを始めとして、04年9月には05年からの韓国とのFTA交渉開始で合意、また05年4月からは日本とのFTA交渉が開始されている。