世界全体を相手としたグローバルな自由貿易を最適な政策とする見方に立てば、一部の国だけを相手とした地域的自由貿易協定(→「自由貿易協定」)は、いわば、次善の政策、セカンドベストということになるが、この次善の政策をとることによって、必ずしも自国の経済状態が改善するとはいえないというのが、地域的自由貿易のセカンドベスト論である。この問題についての先駆的な業績である、ジェイコブ・ヴァイナーの見解(1950)によれば、地域的自由貿易にともなって2種類の対立的な効果が働くことになる。これまで自国の生産に任されていた産業に、その地域内で比較優位を持つ国からの輸入が行われるようになる貿易創出効果と、世界全体で最も比較優位を持つ国からの輸入が、その地域内で比較優位を持つ国からの輸入に取って代わられる貿易転換効果である。貿易創出効果はその国にとってプラスに働くが、貿易転換効果は輸入品の供給源を、最も効率的なものから、それより劣るものへとスイッチすることを意味するので、その国に対してマイナスに働き、この効果が上回った場合、地域的自由貿易はその国にとっても世界全体にとってもマイナスに働く。