ラウンドは、貿易自由化を推進するための多国間の通商交渉。新ラウンドは、2001年11月14日、カタールの首都ドーハでのWTO(世界貿易機関)閣僚会議で発足が決まった。閣僚宣言からドーハ開発アジェンダ(Doha Development Agenda)ともよばれる。交渉は、各国の利害が激しく対立、当初目標とした06年12月末の最終合意期限は達成できず、新たに07年12月末を期限として交渉が進められた。新ラウンドの成否を左右するとみられたのは、アメリカ、EU(欧州連合)、ブラジル、インドの主要4カ国・地域(G4)閣僚会議であったが、アメリカはEUに農業関税削減を、EUはアメリカに農業補助金削減を迫り、ブラジルとインドは、鉱工業品の市場開放を抑えるべく、関税引き下げに消極的姿勢をみせるなど、対立が続いた。さらに、途上国も、鉱工業品では、台頭めざましい中国やアジア諸国が関税削減を望む一方、国内産業を保護したい中南米やアフリカの諸国は削減に反対するといったように、発展段階による利害の対立も浮き彫りになった。鉱工業品の関税削減では、最大19~23%まで削減する議長案に、アルゼンチンや南アフリカが反対、アメリカとEUも、関税を15%以下に引き下げるように求めて不満を表明した。最大の焦点は農業交渉で、農業関税では、アメリカやブラジルが、上限関税(上限を設定し、全品目の関税をそれ以下に引き下げる削減方式)導入を主張し、一部農業品の保護手段として高関税品目を設定する日本やスイスは導入反対を表明するなど鋭い対立が続いた。とくに焦点となったのが農業補助金の扱いであった。アメリカは、07年2月に農業補助金の削減と、補助金の禁止対象の拡大を提案した。しかし、その総額をめぐり、170億ドルまで削減できるとしたアメリカに対し、残りの3カ国は150億ドル以下に削減すべきと主張を展開、対立は平行線をたどった。このため、6月には年内の合意は絶望的との観測が広がった。その後も、7月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が年内妥結へ向けて積極的に関与するとの声明を発表するなど、交渉妥結への努力が続いたが、結局各国の対立は解けず、11月21日、WTOのラミー事務局長は、07年内の新ラウンド交渉妥結を正式に断念したと発表した。