2008年9月に起きたアメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破たんをきっかけに、世界的規模の金融危機をもたらした(リーマン・ショック)。1929年の世界恐慌の再来が心配され、貿易面でも当時同様の各国の強力な保護主義政策による縮小が懸念された。しかし、世界恐慌の教訓は生きており、各国は大規模な景気刺激策を実施するとともに、保護主義的な政策を抑制した。この結果、世界的な株価の底割れは防がれ、2009年には回復の兆しも見えるまでに持ち直した。WTO(世界貿易機関)が09年3月に発表した世界貿易の報告では、08年のモノの輸出額はドルベース換算、名目で15兆7750億ドル、同じくサービスの輸出額は3兆7000億ドルで、それぞれ前年比15%増、11%増となった。ただし、この伸びはエネルギー価格の上昇に起因するとしている。実際、石油価格は、08年には景気悪化後は34ドルを切るまで下落したものの、一時は1バレル145ドルを超えている。そのため、実質ベースのモノの輸出の伸びは2%に縮小している。国別輸出では、1位ドイツ1兆4650億ドル、2位中国1兆4280億ドル、3位アメリカ1兆3010億ドル、4位日本7820億ドルだった。また、「ジェトロ貿易投資白書2009年」によると、08年の世界貿易は、輸出が前年比14.9%増の15兆8910億ドル、輸入が15.2%増の16兆8320億ドル。輸出入とも6年連続で2ケタ増だが、世界不況の影響で10月からは輸出入ともに下降局面に入った。国・地域別では、先進国・地域の輸出が前年比10.7%増の9兆6197億ドル、新興・途上国地域が21.9%増の6兆2711億ドル。新興・途上国が世界貿易を下支えする傾向が続いた。しかし、年後半には輸送機器や電気機器などが失速し、原油や穀物といった1次産品貿易も落ち込んだ。09年の貿易額について、WTOでは先進諸国がマイナス10%、発展途上国がマイナス2~3%、全体でマイナス10%と予測している。