現金通貨(紙幣および硬貨)に対する需要のこと。金利ゼロの資産である現金通貨が保有されるのは、それが財・サービスの売買取引などの支払い決済手段として直ちに使用できるからである。現金通貨に対する需要は、財・サービスなどの取引量に比例する取引需要と代替的な運用手段である債券の利回りなど(すなわち、流動性保有の機会コスト)との対比で決まる投機的需要からなる。債券利回りなどが低下すれば、現金通貨に対する投機的需要は増加する。日本の現金通貨は、2015年末に約103兆円(日本銀行券発行高98.4兆円と貨幣流通高4.7兆円の合計)となり、初めて100兆円を突破した。また、同年中の平均残高対名目GDP比率は約19%と2000年代の平均値15.5%から上昇した。国債利回りが史上最低水準近辺で推移していることによる投機的需要の増加に加えて、現金を大量に使用する訪日観光客の増加、コンビニATM(現金自動預け払い機) の普及に伴う現金支払い準備の増加、さらには、マイナンバー制度の導入に伴う資産隠しの動きなどが影響しているとみられる。