ある商品(例えば、中古車)の市場においてその商品内容を売り手は十分に知っているが、買い手にはよくわからないという情報の非対称性がある場合に、優良な商品が市場から淘汰されて粗悪な商品(例えば、ポンコツ車)のみが市場に出回るようになる現象。金融市場(→「金融」)においては、資金の借り手は自らの経営状態や投資プロジェクトの内容を十分に知っているが、貸し手にはそれらの内容がわからないという意味で同様に情報の非対称性が存在するため、優良な借り手は市場に現れず、危険な借り手のみが熱心に借りたがるという逆選択の状況になりやすい。金融市場における逆選択問題を解消するためには、金融機関が借り手の経営状態や投資プロジェクトを審査して、優良な借り手を発掘し、危険な借り手を排除する審査能力を発揮するよう求められる(金融機関は情報の生産者として、金融市場における情報の非対称性問題を解消するよう努める)。また、金融機関が借り手に対して担保・保証を要求することが通例であるのは、それによって危険な借り手を排除し、逆選択問題の解消に資する効果が期待されるためである。