企業が自社株を活用して従業員の財産形成を支援する仕組みのこと。アメリカでは1970年代より、ESOP(employee stock ownership plan)と呼ばれる、従業員が税制優遇を伴いながら自社株保有ができる制度があり、長期のインセンティブ報酬や業績向上の共通認識醸成、実質的な安定株主といった役割を提供してきたが、それと同様の効果を狙う日本の仕組みということから、こう呼ばれる。2008年10月の追加経済対策で「日本版ESOP導入促進のための条件整備」が掲げられ、同年11月には経済産業省が「新たな自社株式保有スキームに関する検討報告書(日本版ESOP報告書)」を公表、さらに金融庁が09年9月に「日本版ESOPスキームに関するセーフハーバー・ルール」を発表・施行し、注目を集めている。日本版ESOPには「従業員持ち株会活用型」と「自社株退職給付型」の二つのタイプがあり、09年末時点では前者が過半を占め、全日本空輸や上新電機、パラマウントベッドなどが導入した。日本では今後も株式持ち合いが解消される傾向が続くこと、民主党が「公開会社法」構想で従業員によるガバナンスを強化する方向であることなどからも、日本版ESOPの拡大が期待されている。