従来のファイナンス理論では必ずしも重視されてこなかった投資家・個人の心理や価値観などが、経済的な意思決定や市場価格に与える影響を分析する理論。従来のファイナンス理論はあくまで経済的に合理的な投資家・個人による理想的な行動のあり方を追求する一方、行動ファイナンス理論は実際に投資家・個人が取ってしまう、そうした理想的な行動からの乖離(かいり)とその理由を取り扱う。例えば、株式や債券などで運用すれば預貯金より高いリターンが期待できるものの、そもそも全くそうした資産への投資を行わない傾向や、投資を行っても偏った種類・銘柄などに資産配分を集中してしまい、適切な分散投資を行わない傾向、年齢の変化などに合わせて適切なアセット・アロケーション(資産配分、保有資産の組み合わせ方)が変化するにもかかわらず、主体的にアセット・アロケーションを見直さない傾向などが代表的な分析対象である。アメリカの金融機関では、行動ファイナンス理論の知見を金融サービスや商品開発に積極的に活用する事例が少なくなく、401(k)プラン(日本の確定拠出年金に該当)の運営におけるターゲット・イヤー・ファンドの活用はその代表例であろう。