最近のインサイダー取引は、会社関係者からの情報受領者が違反行為を行う事例が多く、上場会社の公募増資に際して、引き受け主幹事会社からの情報漏えいに基づく事例の発生、資産運用業者が顧客の計算で違反行為を行った場合の課徴金額の低さ、などが特徴や課題としてあげられる。その対応の検討とともに、近年の金融・企業実務を踏まえたインサイダー取引規制の見直しを目的に金融審議会に設けられたワーキング・グループ。2012年12月に最終報告が発表された。報告書では、情報伝達・取引推奨行為については、インサイダー取引規制の対象者である会社関係者が情報伝達・取引推奨することを原則として規制対象とした。一方で、通常の業務・活動に支障が生じないような配慮、証券会社を含む上場株券の仲介業者は証券市場のゲートキーパーとしての公共性に鑑みて、課徴金額の計算方法の見直しや氏名の公表などの違反行為に対する実効性のある抑止策などの必要性があげられた。また、資産運用業者が顧客の計算で違反行為を行った場合の課徴金については、計算基準となる運用報酬の期間拡大が検討された。なお、近年の金融・企業実務を踏まえた規制の見直しについては、重要事実を知っている者の間での取引にかかわる適用除外などの規制緩和も盛り込まれた。