アメリカの個人を対象にした老後のための資産形成制度。IRAの口座を開設できる個人は、自営業者やサラリーマン、公務員など勤務先による制約は原則なく、主婦も含まれる。口座に年間で拠出できる金額は最大5000ドル(50歳以上は6000ドル)で、所得水準に応じて所得控除になる(将来引き出した時点まで課税繰り延べ)。口座の積立資産の運用益も同じく課税繰り延べ。なお、積立資産を60歳以前に引き出すと本来の税率にペナルティー分が上乗せされる。口座開設の金融機関と積立資産の運用対象は個人が自ら選ぶ。小口資金・分散投資の観点から運用対象は投資信託が一般的である。約10兆ドル(約935兆円)に至るアメリカの投資信託残高のほぼ4分の1がIRAで保有されており、アメリカの投資信託普及の牽引車的な存在である。1982年のレーガン政権による税制優遇拡大を契機に一気に普及し、中流階級を預金から投資に移行させた制度としても知られる。その後の政権も共和党、民主党にかかわらず、IRAの一層の普及拡大を目指し、その使い勝手の向上を図る制度改革を継続してきた。日本の確定拠出年金・個人型は同様の制度と言われるが、IRAに比べると、対象者の制約が大きいなど欠点が目立つ。