ノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル(Robert Mundell)が1960年代前半に提唱した、「独立した金融政策運営、自由な国際資本移動、固定為替相場の維持、の三つを同時に達成することはできない」という国際金融政策の制約に関する命題。たとえば日本は、自由な資本移動と独自の金融政策運営を行っているが、固定相場ではなく変動相場制を採用している。他方、新通貨を導入したユーロ圏諸国は、自由な資本移動と単一通貨(完全な固定相場制)を採用する半面、中央銀行を統一してECB(欧州中央銀行)を設立することで、各国は独自の金融政策を放棄している。中国では2005年7月までドルに対する固定相場制を維持するとともに、独自の金融政策運営を行ってきたが、国際資本移動を厳しく規制していた。このように今日でも、この理論は有効性を保っている。