GDP(国内総生産)と内需の差額は定義により貿易・サービス収支に等しいが、内需は国内総生産の吸収要因(アブソープション absorption)と見て、国内総生産と内需のバランスから貿易・サービス収支を分析する考え方。すなわち、
[貿易・サービス収支=
GDP-内需]
が常に成立するが、内需が一定の下ではGDPの増加は貿易・サービス収支を改善させる。この理論からは、弾力性アプローチでは分析が困難な、生産がフル稼働の下での通貨切り下げ政策の弱点が理解しやすい。景気が過熱気味でフル生産を続けている国が経常赤字を是正するために、通貨を切り下げた場合、切り下げにより輸出需要が増加しても自国の生産余力はなく、実質GDPは増加せず物価だけが上昇する。もし政府が金融・財政政策の引き締め措置を採用しなければ、内需も減少せず、この結果、貿易・サービス収支も改善しない。一方このアプローチの弱点は、自国の生産と内需のみが注目され、海外の生産・内需が視野に入らないことである。貿易・サービス収支に対する弾力性アプローチとアブソープション・アプローチは、二つの独立した理論というよりは、その動向を分析する上での補完的な見方と考えるべきである。