貿易・サービス収支は、国民経済計算における一国全体の貯蓄と投資の差額に等しいが、この関係を中心に国際収支(→「国際収支統計」)の変動を分析する理論。経常収支は、貿易・サービス収支、所得収支、経常移転収支の三つの合計に等しいが、貿易・サービス収支が全体の動きをほぼ規定するため、経常収支の分析にもこの理論がよく使われる。経済の各部門にとって収入と財・サービスに対する支出の差額は常に資金過不足に等しい。
[収入-支出=資金余剰
(マイナスなら資金不足)]
また経済のすべての資金過不足を合計すると、ある部門の資金不足は別の部門の資金余剰でファイナンスされるはずであり、必ずゼロになる。この関係を、日本の民間部門、政府部門、および日本以外のすべての国(海外部門)に対して当てはめると、次の式が成立する。
[民間部門資金過不足
+政府部門資金過不足
+海外部門資金過不足=0]
民間部門の資金不足は(民間投資-民間貯蓄)、政府部門の資金不足は財政赤字、海外部門の資金不足は海外全体の貿易・サービス収支の赤字(=日本の貿易・サービス収支の黒字)にそれぞれ等しいので、次の関係が成立する。
[日本の貿易・サービス収支=
民間貯蓄-民間投資-政府財政赤字]
この関係から、貿易・サービス収支は民間貯蓄の増加により黒字が拡大する一方、民間投資の増加や財政赤字の拡大により、黒字が縮小(ないし赤字が拡大)することが分かる。