連邦議会で定めた政府債務残高の「債務上限」の引き上げをめぐる与野党間の綱引きによって、2011年にアメリカ国債が史上初のデフォルトに陥る寸前まで追い込まれた問題。上限額14.29兆ドルを引き上げない限り、アメリカは新たな借り入れができなくなり、既発債への利払いができなくなる寸前まで追い込まれたが、引き上げの条件となっていた財政赤字削減策などで民主、共和両党の指導部は合意したため、危機は避けられた。なお、連邦政府の債務には、1917年成立の公債法(リバティーボンド法、自由公債法)で上限が定められている。2011年8月5日に、信用格付け機関スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、国の歴史で初めて、アメリカの国債の信用格付けを引き下げた。背景には、金融危機(→「世界金融危機」)後の景気刺激策で財政が肥大化し、連邦政府の政府債務残高(対GDP比)はほぼ100%に到達しているという財政肥大化の問題がある。今回の問題は、アメリカの意思決定力の低下を暴露する形となり、アメリカ国債への信認の低下と、世界的な株式暴落をもたらし、円高ドル安の大きな原因となった。