労働者の生命や身体を労務の提供にともなう危険から保護するよう配慮すべき使用者の義務をいう。労働災害に遭った労働者またはその遺族が使用者に対して損害賠償請求を行う場合に、その前提として使用者が安全配慮義務に違反したと主張されることが多い。労働契約法も、「使用者は、労働契約により、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(5条)と規定している。なお、判例の中には「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行にともなう疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」として、過労自殺を招いた使用者の責任を認めたものがあり、こうした判例の考え方に従えば、使用者が労働者に対して負う配慮義務の範囲は、より一般的な健康の配慮にまで及ぶことになる。