工場を少人数グループに細分化して独立した疑似カンパニーとし、仕事のみならず関連会計情報の可視化(→「仕事の“見える化”」)によって労働意欲高進・生産性上昇を図る制度。実際、グループごとに、各疑似カンパニーは、後工程への出荷額から人件費や各種部品、前工程からの受け入れ額、保全や生産技術部門からの支援サービス料などを勘案して(日々)損益計算を行い、導出された損益指標に基づきつつ管理される。実践例によれば、固定費低減や製造リードタイム短縮に大きな効果をあげている。この種の制度導入の背景には、工場内の生産システムを可能な限り自己完結型にすることで、作業者に自らの仕事の意義や効果を分かりやすくし、労働意欲を高めるねらいがある。実際、生産プロセスの可視化度が高まると、担当作業者にとって、ワンランク上のレベルから自分たちの作業状況を見下ろすことができるため、自らの作業の意義がより明確な形で理解可能となる。加えて、日々完結した形で、自らの作業の効果をタイムリーに知ることができるので、さらなる労働意欲の向上が期待できる。なお、疑似カンパニーの個別最適化行動は、必ずしも工場あるいは会社全体の最適化行動にはつながらない。疑似カンパニー間に連係の失敗が発生するからである。したがって、疑似カンパニーの個別最適化行動を全体最適化につなげるためには、(1)工場内の各種工程を自己完結型に切り分ける方法、(2)切り分けられたとして、損益計算を行う場合に考慮すべき生産指標の選択方法、(3)その際に付与されるべきコストや価値の評価方法、などに相当な工夫を要する。