第11次5カ年計画(2006~10年)で形成が明らかにされた経済圏。広東省、福建省、江西省、湖南省など8省と香港・アモイで構成される。広東省では、1990年代に繊維製品やパソコンの委託加工が普及した。委託加工は、日本企業が工場設立等の直接投資を行わず、現地企業と契約を交わし、生産および加工を委託する形態。これによって、広東省の東莞では、低賃金の労働力を活用したパソコンの生産基地として産業集積が進み、珠江デルタ経済圏が形成された。しかし、98年にホンダが広州に進出し、さらに日産自動車、トヨタ自動車と、日本企業3社が1市に集積した結果、状況が一変することになった。広州では、委託加工から、部品を現地で生産し、製品を組み立てる方式へ転換し、自動車産業クラスターが形成された。日本の自動車産業・関連部品産業の広州周辺への進出は98年から2006年までに400社を超え、その発展が、汎珠江デルタ経済圏となった。5カ年計画では、港湾基礎施設の建設、物流ルートの改善、同経済圏の主要9都市を結ぶ中長期鉄道網計画が盛り込まれた。また、ベトナムを含むASEAN諸国と中国南部の連携と発展も、次の段階として構想されている。