インドの自動車メーカーのタタモータースが、「大衆に手の届くクルマ」を掲げて開発した超低価格小型車。4人乗りで排気量は624cc、最高時速が105キロメートル。ワイパーは1本、運転席側だけしかドアミラーがないなど、徹底したコストダウンが図られているのが特徴。発表時は10万ルピーの価格を付けて世界中の注目を集めた。生産工場の建設などに手間取り、当初の2008年9月発売の予定が遅れて09年7月に販売が開始された。価格は最初の10万台のみが10万ルピー、それ以降は約11万ルピーとなったが、これは、それまでの国内市場の最安値車両の半値近い価格設定。タタ自動車はインド大手財閥タタグループの中核企業であり、インド自動車業界の民族系最大手メーカー。「ナノ」の登場は、インド国内での自動車市場の拡大だけでなく、中国の自動車市場の発展(→「1000万台市場」)など、今後拡大する新興国市場向けの超低価格車の生産拠点として、インドを大きくクローズアップさせることになった。日本企業のアジア向け直接投資でも、08年度はインドが中国を抜いて初めて最大の投資先となり、日本企業のインド進出が加速、自動車メーカーも生産規模拡大や新規進出が相次ぐ状況となっている。