タイではバンコク首都圏に人口・産業が集中し、地域格差が大きい問題を抱えている。この問題の解消を目的に、持続可能な発展を促すため東北部などと並んで優先度の高い、南部臨海地域の開発計画プロジェクト。タイの国家経済社会計画(第10次 2001~05年)では、知識・革新を基盤とした生産構造の改善、貿易投資における競争システム、開発の恩恵を公平に分配する制度の構築、効率的な経済運営、財政・金融制度などが挙げられている。その一環にこのプロジェクトがあり、バンコクの東南部を対象とした東部臨海開発プロジェクトに続くものである。東部臨海開発計画は、1982年から93年まで継続し、産業集積に成功した。レムチャバンの港湾と工業団地の建設、東部臨海開発の送水管の建設、バンコクからチョンブリを経てパタヤに至る道路の建設など、日本からの円借款は貸付承諾総額で約1788億円が供与された。この地域には、三菱自動車、トヨタ、フォードなどが進出し、自動車産業が集積、「アジアのデトロイト」と呼ばれるようになるなど、大きな成果をあげた。半面、東部臨海地域のマプタプット開発は環境問題に直面している。一方、南部臨海地域は今後の発展が待たれる段階にある。