水の電気分解と逆に水素と酸素が穏やかに結合して水ができる化学反応を利用した発電装置。1801年にイギリスで基本原理が発見され、1965年にゼネラル・エレクトリック社がアメリカの有人人工衛星「ジェミニ5号」用に初めて実用化した。発電時の副生成物は水と熱だけで、エネルギー効率が高く、環境負荷の低い次世代エネルギー供給方式として各国が開発にしのぎを削っている。日本では81年の「ムーンライト計画」から本格的な開発が始まり、93年の「ニューサンシャイン計画」、2000年の「ミレニアム・プロジェクト」と政府主導の推進策が重ねられてきた。経済産業省の産業政策ビジョン「新産業創造戦略」(04年)でも、先端的な新産業7分野に盛り込まれ、市場展望と政策のアクション・プログラムが示されている。また、保安管理規制などの緩和策や、水素供給ステーションの設置などの支援策も講じられ、技術標準の国際的な統一に向けて、「水素経済のための国際パートナーシップ」の協力体制も築かれつつある。業務用発電代替設備や家庭用コージェネレーション(熱電併給)装置、モバイル機器用電源、燃料電池車などの実用化が加速され、09年には、パナソニックと荏原バラードの2社が、世界初となる家庭用燃料電池(出力1キロワット)の量産を始めた。