燃料電池を動力源とする電気自動車(EV electric vehicle)。化石燃料と電気を併用するハイブリッド車よりクリーンな低公害車として、開発競争に拍車が掛かっている。1980年代後半に、カナダのベンチャー企業バラード・パワー・システムズが、燃料電池の小型軽量化でコストと性能の技術的隘路を切り開き、実用化の可能性を飛躍的に高めた。アメリカでは2000年から公道走行試験が行われており、02年2月には、普及に向けて、以後11年間で30億ドルの税制優遇策も発表されている。日本では、02年度から官民共同の水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)が始まり、トヨタ、ホンダ、日産、ダイムラー、GM、出光興産、バブコック日立などが参加している。燃料となる水素の生成・貯蔵技術や水素供給インフラ(水素ステーション)の整備など、本格的な普及には課題も山積しているが、市販車の月額リース料金も当初の約100万円から数十万円に下がっている。日本政府は、10年度に5万台、20年までに500万台、30年までに1500万台の普及を目標にしている。EU各国では、100都市ほどで燃料電池バスの実証運行が行われており、国内では、05年に愛知万博「愛・地球博」の会場間輸送で実証試験を行ったハイブリッド型燃料電池バスFCHV-BUS(トヨタと日野自動車の共同開発)を、06年には中部国際空港(セントレア)周辺に移して、営業運行による走行試験が行われている。