鉄と比べて重さ4分の1、強度10倍、弾性度40倍と、軽量高強度を持つ先端機能材料。耐摩耗性、耐腐食性、耐熱性、寸法安定性、電磁波シールド性、X線透過性、電気伝導性等の材料特性に優れ、航空宇宙(人工衛星、航空機)、スポーツ(釣具、ゴルフシャフト、テニスラケット)、産業資材(風力発電用ブレード、パラボラアンテナ)分野に用途が広がっている。1879年に発明王トーマス・エジソンが電球のフィラメント用に木綿や竹を焼いて炭化させたのが始まりとされ、1957年にアメリカのバーネビー・チェニィ社とナショナル・カーボン社が試作、59年にロケットの噴射口などに実用化された。アクリロニトリルを主成分とする羊毛風合いの合成繊維であるアクリル繊維の原糸を高温で焼き、炭化させて作るPAN系と、石炭を乾留したコールタールや石油重質分を原料とするピッチ繊維を焼成して製造するPITCH系があり、生産量はPAN系が主流。PAN系は61年に大阪工業試験所の進藤昭男博士が開発に成功し、東レ、東邦テナックス、三菱レイヨンの日本3社が世界市場の約7割のシェアを占める。最大手の東レは、06年4月にアメリカのボーイング社の次世代旅客機B787(→「A380」)の主翼・尾翼・胴体向け(機体重量の約50%)に、炭素繊維複合材を21年までの16年間にわたり長期供給する包括的正式契約を締結している。今後は自動車市場向けに期待が高まるが、埋め立て処理による廃棄が難点とされている。