自首に対する酌量により、競争政策の効果を高める制裁措置減免の制度。ゲーム理論にある、共に隔離状況にある囚人たちが互いに黙秘の合意を信用できず、自供により左右される利害に悩み、結局全員が自供してしまう「囚人のジレンマ」の応用例とされる。1993年、アメリカの反トラスト法に「Corporate Leniency Policy」が導入され、EU(96年)、韓国(97年)、カナダ(2000年)でも取り入れられて、多大な成果をあげている。その一例には、1999年にフランスの化学・製薬企業ローヌ・プーラン社の申し立てにより、ドイツ、スイス、日本の製薬7社が、総額11億ドルの課徴金を支払ったビタミン・カルテルの事件がある。日本版リーニエンシー制度は、入札談合や価格カルテル等の不公正取引を、自ら公正取引委員会に通報した場合に得られる課徴金減免制度。2006年1月施行の改正独占禁止法(独禁法)により、公正取引委員会の権限強化の一環として、犯則調査権限(強制調査権)とともに新設された。通常、大企業の場合には、卸売業で当該売上高の2%、小売業で3%、製造業等で10%が課せられる課徴金(再犯企業は5割増)が、立ち入り調査前の第1申告者には100%(刑事訴追免除)、第2申告者には50%、第3申告者には30%が減免される。立ち入り調査後の減免申請は一律30%の減額となる。鋼鉄製水門工事の入札談合疑惑が最初の適用ケース(06年3月)となり、早々に威力を発揮している。独禁法による行政処分が厳しいことで知られるEUでは、鋼鉄製水門工事のような製造業のケースで、当該事業売上ではなく、全社世界総売上の10%が課徴金に科される。株主代表訴訟など、違反に伴う損害賠償のリスクや、06年5月施行の会社法で内部統制システム(→「日本版SOX法」)の構築を義務付けられたことも連動して、経営者の公正競争への意識改革が迫られている。