食料の入手が著しく困難となれば、国民生活に大きな影響を与える。食料危機には六つのケースが想定できる。(1)戦争や自然災害によって食料の輸入ルートが途絶する「偶発的危機」、(2)天候の循環的変動で世界的な不作を生じ、食料不足で価格が高騰する「循環的危機」、(3)輸出国の政治戦略の一環として食料輸出が禁止ないし制限される「政治的危機」、(4)世界の食料生産が人口増加に追いつかないために生じる「マルサス的危機」、(5)原子力発電や放射性廃棄物による事故、核戦争などで生態系が破壊されて生産不能になる「放射能汚染危機」、(6)バイオ燃料(→「バイオエタノール」)の需要の高まりにより、穀物が燃料用と競合して生じる「バイオ燃料シフト危機」である。これらの危機に対しては、自給力の維持と備蓄、および輸入の確保が有効である。自給力の維持は半年から数年の中長期的な危機、および危機の未然防止に有効であり、数カ月といった短期的危機には備蓄と輸入の確保が有効である。世界の食料需給の安定化に貢献するためには、各国が適正と思われる自給、備蓄、貿易のそれぞれの水準に責任をもち、これを国際的に認め合うとともに、国際協力も積極的に推進することである。