遺伝子操作などのバイオテクノロジーによって作られた、親とまったく同じ遺伝子をもつ羊、牛。1996年7月にイギリスで、世界で初めて羊の成獣の乳腺から取り出した細胞を使い、クローン羊「ドリー(Dolly)」が誕生した。さらに、この体細胞クローンに遺伝子組み換え技術を用いて、人間の遺伝子を組み入れたクローン羊「ポリー(Polly)」も誕生した。実は、クローン動物自体は、珍しいことではない。卵細胞を元にしたクローン技術は完成しており、クローン牛は日本でも200頭ほど誕生している。しかし、「ドリー」「ポリー」、そして98年7月に、世界で初めて成功した日本のクローン牛は、生殖細胞からではなく、体細胞から誕生した点が画期的である。畜産の世界であれば、オスなしで産乳能力や肥育能力が高い家畜の大量のコピーが可能となり、また、医薬品の世界であれば、医薬品原料の生産能力の高い動物を大量にコピーできるだけでなく、動物の個体差がなくなり、医薬品原料の安定生産が可能となる。さらに、絶滅の危機にある動物の複製も可能となる。