販売価格が生産費を恒常的に下回っている作物を対象に、その差額を販売農業者に交付する制度(2013年に安倍晋三政権下で打ち出された新農政での位置づけ)。「2005年食料・農業・農村基本計画」の中に農業経営の安定対策の確立が盛り込まれ、同年10月に「経営所得安定対策等大綱」が定められた。しかし、従来の品目別価格支持政策からの転換を図った当初の直接支払政策(「品目横断的経営安定政策」)は政策対象者を一定規模以上の認定農業者や一定の条件を備える集落営農に定めるなど、農業生産現場に混乱をもたらしたこともあり、07年に「水田・畑作経営所得安定対策」に名称変換され、政策対象者の要件が緩和された。その後、この政策は民主党政権下で交付金支払い対象者を限定しない戸別所得補償制度にとって代わられた。戸別所得補償制度は自民党が政権復帰した直後の13年度に「経営所得安定対策」と再び名称を変え、交付金の名称や従来の措置の統合等があったものの、ほぼ同様のかたちで継続された。しかし、13年に政府の農林水産業・地域の活力創造本部の主導のもとで大幅な見直しが行われ、自民党農政を色濃く反映する対策に様変わりした。農政改革の一環で、生産現場の強化を図るため、交付金支払い対象者を規模要件により限定しないものの、コメに特化してきた従来の制度の変更(コメの直接支払交付金の半減など)が打ち出された。その背景には、日本のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉の参加等、農業の国際化の進展の中、より効率的な生産を可能とする体質への転換が国内農業に求められていることがある。