IQ制度とは、ある魚種の漁獲枠を個別の漁業経営者に配分する制度である。ITQは、その漁獲枠の売買を可能にした制度である。つまり、漁獲枠の「流通」を可能にしたものである。非漁業経営者も購入可能であることから、投資家の投機対象になったり、レンタル物件になったりと、漁獲枠の所有と漁業経営が一致しないことも生じる。ニュージーランド、アイスランドなどの漁業国において、この導入が盛んに行われた。また、IQの一種として、漁船別に配分される漁船別漁獲割当(Individual Vessel Quota ; IVQ)がある。漁船に漁獲枠が対応しているため、漁獲枠の所有と漁業経営が一致し、漁獲枠に対する責任が明確になる。ノルウェーがこの制度の先駆者である。これらの漁獲枠制度は基本的には総漁獲可能量(TAC)制度のもとに実施される。それゆえ、TACの増減に対応するため、漁獲枠はTACに対する配分率で設定されている。毎年、数量が固定されているわけではない。さらに、TAC制度のみでは、政府は総漁獲量のみを管理していれば良かったが、個別割当制度となると各漁船の水揚げ量の管理だけでなく、魚の海洋投棄や横流し(隠れて出荷する)などのモラルハザードへの対応が必要となり、漁船の操業を洋上で監視しなければならないケースもある。日本では、遠洋マグロ延縄(はえなわ)漁業において大西洋クロマグロとミナミマグロが、日本海カニかご漁業においてベニズワイガニが、IQ制度の対象魚種である。いずれも、政府が管理している。なお、日本ではITQ制度はない。一方で、法律に基づかず漁業者集団の中で自主的にIQ制度を導入しているケースがある。