越水しても堤防が急速に崩壊しないように、市街地側(裏法面)に土を3%以内の緩やかな勾配(こうばい)で盛り、幅広く造成したもの。越水すると甚大な被害が生じる通常の堤防に対し、スーパー堤防は、洪水が堤防高を越えても堤内に緩やかに流れ落ちるため、市街地の被害を最小限に抑えることができる。スーパー堤防整備事業では、治水と都市整備を一体にして進めることで、機能性と安全性を兼ね備えた計画的なまちづくりができる。これまでは堤防としてのみ利用していた土地を、公園や緑地・道路などに利用できるほか、川辺へのアクセスも便利になり、水と緑に親しめる新しい水辺空間として、より有効に土地を利用することができる。また、スーパー堤防は、その上部で通常の土地利用が行えることを前提に盛土を行う事業で、完成後は従来通りの土地利用ができるため、用地買収を行う必要がなく、地権者は土地を手放す必要がない。居住者は、スーパー堤防部分の地盤改良や土地造成の間、別のところで仮住まいを余儀なくされるが、整備後には建物の建築や耕作に利用することができ、堤防上にまちなみが作られることになる。スーパー堤防整備事業は、建設省(現国土交通省)が1987年に事業化し、千葉県印旛郡栄町矢口(やこう)の利根川沿いに完成したものが第一号である。現在、東京・大阪周辺の荒川、利根川、江戸川、多摩川、淀川、大和川の6河川で実施されている。