火力発電所や製鉄所、油田・ガス田など大規模排出源から二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地中や海底に貯蔵する技術。分離回収技術には、アルカリ性溶液との化学反応を用いる化学吸収法が実用化技術として期待されている。回収プロセスとしては燃焼後回収がすでに実用化されており、ほかにも石炭ガス化複合発電(IGCC)における燃焼前回収が実証段階にある。貯蔵については、地下の帯水層にCO2を圧入・貯留する技術が有望視されている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による2005年のCCSに関する特別報告書では、世界全体の貯留可能量は少なくともCO2換算で2兆トンと試算されている。これは近年の世界全体の化石燃料起源CO2排出量の約60年分に相当する。油田における石油増進回収目的のCO2注入は経済的であり、以前から行われてきたが、長期にわたる大規模な貯留や油田以外の貯留は新規技術であるため、投資コストやリスク評価面の課題が残る。現在、大規模実証実験がカナダのワイバーン油田、ノルウェー沖のスライプナー(帯水層貯留)、アルジェリアのインサラ・ガス田などで進められている。日本では、2000~08年に新潟県長岡市にて枯渇油田・ガス田貯留の実証実験が行われた。現在、北海道苫小牧市沖の海底下帯水層を対象とした大規模実証実験が実施中である。