消費者を識別できるIDを特定化したPOSシステムのこと。POS(point of sale)システムは、物品販売の売上実績を単品単位で集計する小売経営における実務手法であり、販売時点情報管理ともいう。小売業における導入の利点は、商品名・価格・数量・日時などの販売実績情報を収集して、いつ・どの商品が・どんな価格で・いくつ売れたか、の売れ行き動向が客観的データで把握できる点にある。しかし、販売実績データは販売結果の確認であり、消費者ニーズの多様化が進展する中で、販売要因を分析し今後の販売促進策の展開を図るには限界がある。そこで、ID-POSの構築に取り組む動きが活発化している。ID-POSによって、小売業は顧客の詳細な購入履歴を分析することが可能になる。それらの仕組みを活用することで、顧客個々人の購買行動や併買分析などにより、既存顧客の固定化や新規顧客獲得策の展開といった、消費者に直接働きかけるマーケティングの展開が可能になる。店舗においては、いったん商品を介して顧客一人ひとりに働きかけるマーチャンダイジングという、究極の顧客志向を目指した戦略展開を図る条件が整ったと言える。そのことは、小売業にはID-POSで収集した膨大なデータを企業経営戦略に対応して分析し、それらデータに基づくマーチャンダイジングの展開ができる人材がますます必要になることを意味している。