2011年6月8日に公布された法律第63号「特許法等の一部を改正する法律」は、イノベーションのオープン化や権利者等の保護、紛争の迅速な解決制度、利便性向上のための料金・手続きの見直しを図る法改正である。実質的な項目としては(1)通常実施権等の当然対抗(登録なしに主張できること)、(2)冒認出願(特許を出願する権利のない者が申請をした出願)等に係る特許権の移転請求、(3)審決取消訴訟提起後の訂正審判の禁止、(4)再審の訴えにおける主張の制限、(5)無効審判の確定審決の第三者に対する効力の廃止、(6)延長登録無効の抗弁、(7)審決の確定の範囲等に係る規定の整備、(8)新規性喪失の例外適用の拡大、(9)出願人・特許権者の救済手続きの見直し、(10)料金の見直し、(11)商標権消滅後1年間の登録排除規定の廃止、がある。特に(1)は、一つの製品に複数の特許権が絡む実情に鑑みると、事実上ほとんど利用されていなかった通常実施権(許諾を受けて特許を使用する権利)の登録制度を廃止し、登録なしに通常実施権の第三者対抗力を当然に認め、ライセンス契約の保護強化を図るもので、国際的な調和にもつながる。ただし商標法の通常使用権は従来通り登録が対抗要件。また(2)により共同研究等における発明者の保護を図ることができる。12年4月1日に施行された。