国家は領土内のあらゆる個人や集団に対して絶対の支配権を有し、ほかのいかなる法的制限にも服さないとする観念。絶対主義王制が全ヨーロッパを支配する教会の権力と、領土内の封建諸侯の権力双方と戦いながら近代国家を樹立する際の理論的な武器となった。絶対君主は権力と権威をともに有していたが、国内政治の主権が国民にあるとする国民主権論が提唱されるに伴い、国民とは誰であり国民の意思はどのようにして確認できるかという新しい問題が生じることになった。近代の憲法や政府などの制度、および代表や選挙といった手続きは、その問題に一応の解答を与えている。戦後の日本に見られるように君主制の下でも国民主権が可能であり、主権論と政体論とは別の次元の問題として考えられている。なお、国際関係においては国家主権の絶対性が今も主張されるが、現実には、条約による拘束や経済的な対外依存などによってさまざまな制約の下にある。国際間における主権の絶対性は、主権国家間の対等性の主張として現れる。