近代国家は国民ないし民族を基本的単位としているために国民国家ともよばれる。他方、西ヨーロッパに成立した近代国家は地中海世界から大西洋に、やがては太平洋地域に活動の舞台を広げ、争って植民地帝国の建設に乗り出していった。西ヨーロッパにおいては絶対王制という権力の核が、近代国民国家を結晶させていく触媒となったが、その他の世界においては植民地支配(あるいは植民地支配を受けるかもしれないという恐怖)が、国民国家の形成を促進していく。1776年にはイギリスの植民地支配に反抗してアメリカ合衆国が生まれ、続いて1810年から28年にかけてスペイン、ポルトガルの植民地領にラテンアメリカの国々が独立し、また1870年前後には日本、イタリア、ドイツが統一国家を形成した。1917年にロシア革命によってロシア帝国はソビエト社会主義共和国連邦に生まれ変わり、ハプスブルク帝国が解体して東ヨーロッパ諸国が独立した。しかし、今日「第三世界」とよばれる70余りの国々が、欧米列強と日本の植民地帝国の崩壊のあとを受けて独立するのは、第二次大戦以後のことであった。現在では世界の大多数の人々がいずれかの国家に属している。アメリカ合衆国や旧ソビエト連邦のような巨大国家、カナダやスイスのような複数民族から成る国家は複数の支分国(州、カントン=スイスの地方自治体、共和国)が単一の主権の下に結合して、連邦国家(federal state)を形成している。