他人の反対を押し切って自分の意思に従わせる能力を権力とよぶ。権力は家庭や学校、経済界や宗教組織の中にも作用しており、このように広く存在している権力を社会権力とよぶ。それが一定の地域社会の住民すべてが従うものとして成立したとき政治権力とよばれる。政治権力は究極的には他者に強制を加える能力に依存している。警察、軍隊、刑務所などは国家によって組織化された強制力である。しかし、強制力の行使は、むしろ政治権力が手詰まりに陥ったことを示している。費用と効果のバランスシートから見れば、直接の強制力行使よりは威嚇の方が優れており、威嚇よりも説得の方がさらに優れている。人の本性からして、権力が強いが故に従うのではなく、それが正しいが故に積極的に服従しようとするからであろう。たとえば、暴力団など強制力に訴える組織は国家以外にも存在するが、国家の強制力は一般に有用でかつ正しいと考えられている。この正しいという側面に特に注目して権威、あるいは正統性とよぶ。政治権力は、正統性を独占した権力である。