行政部の首長である大統領が立法部の信任によらず、立法部議員とは別個の選挙手続きによって選出される制度。イギリスの植民地支配から独立したアメリカ合衆国で成立したもので、アメリカ大統領は行政部の首長であると同時に国家元首でもある。議院内閣制と違って、大統領は議会に対して責任を負わず国民に対して直接責任を負う。従って大統領が任期4年の間に解任されるのは、弾劾(下院が発議し上院が審判する)が成立した時だけ。大統領は議会の召集権、解散権、法案と予算を提案する権利をもたない。さらに厳格な三権分立制のもと、連邦裁判所は最終的な違憲立法審査権を慣行として成立させた。日本国憲法は議院内閣制を採用したが、同時にアメリカに由来する違憲立法審査権を裁判所に与えている。大統領制を採用している国のうち中南米諸国やフィリピンはおおむねアメリカ型で、フランス、ドイツ、イタリアなどは国家元首として大統領をおいてはいるが、行政部はイギリス型の議院内閣制によって運営されている。その権限は、第5共和制のフランス(1958~)ではきわめて強力であるが、ドイツ、イタリアでは名目上の元首として形式的なものでしかなく、大統領の権限は国によって多様である。