立法権(議会)、行政権(内閣・大統領)、司法権(裁判所)が組織的に独立し、機能的にそれぞれ抑制・均衡する制度。フランスのモンテスキューが「法の精神」(1748年)でイギリス人の自由は三権が互いに打ち消し合う空白の中に成立すると述べたことは有名である。アメリカ合衆国憲法がこの原理を大幅に採用したことから、近代憲法の基本原理とされるようになった。歴史的には権力分立論の起源はさらに古く、古代ギリシャでは、一人が支配する君主制、少数者が支配する貴族制、多数者が支配する民主制、の三つの統治形態のそれぞれの長所を集め欠点を補う混合体制が、理想の政治体制とされていた。モンテスキューの三権も実は王制(執行権)、貴族制(司法権)、民主制(立法権)の混合体制であった。バジョットの「イギリス憲法論」(1867年)は、イギリスの議院内閣制の特徴は、執行権を担当する内閣と立法権を担当する議会とが「融合」している点にあると主張して三権分立論を葬り去り、より実態的な研究への道を開いた。三権分立制の適用の仕方の違いによって、議院内閣制と大統領制という二つの異なった制度が生まれる。