国民的利益、国家的利益などと訳され、国益という言葉が用いられることもある。国民の利益が民主的に統合されていれば国民的利益は国家的利益と一致するが、民主的統合が弱ければいわゆる民益が国益と衝突することもある。たとえば、沖縄の米軍基地設置をめぐる紛争などはその例である。国民的利益は、ある程度までは客観的に定義できるが、それ以上の点では政治的論争の焦点となる。ルネサンス期イタリアの都市国家では、国家の存在を至上の価値として、国家の維持、強化を図るための法則、行動基準を国家理性(レーゾン・デタ raison d'Etat 仏)とよんだ。現実には国家を運営している特権者の利益が至上のものとされており、国民主権の下、主権者たる国民の利益という国民的利益観念の挑戦を受けることになる。